鼻血 強い刺激や緊張は禁物

鼻の内部を診察する笠井創さん(左)=笠井耳鼻咽喉科クリニックで

鼻の診察

の内部

キーゼルバッハ部位

 

 鼻の奥から、生暖かい感触とともに出てくる鼻血。私は、物心ついた頃から鼻血が頻繁に出ています。危険時間帯は、昼下がり。対照的に「何十年も出ていない」という人もいます。鼻血を調べてみました。

 そもそも、鼻血はどこから、どうして出るのだろう。笠井耳鼻咽喉(いんこう)科クリニック(東京都目黒区)の笠井創院長に聞いた。

 鼻血の90%は、左右の鼻の穴を仕切る壁の入り口部分(キーゼルバッハ部位)から出る。この部位の毛細血管が切れて、動脈血が出るのが通常の鼻血だ。

 超小型カメラがついた鼻咽腔(びいんくう)ファイバースコープで私の鼻の内部を調べてもらった。たちまち「鼻血が出やすい典型的な状態ですね」との診断。モニターで拡大映像を見ると、毛細血管がはっきりと浮き出ている=写真下右。

 出血の度に表面が傷付けられ、かさぶたのように盛り上がっている部分もある。この盛り上がりがちょっとした刺激で血管が破れる原因となり、さらに次の出血を引き起こすのだという。

 鼻血が出にくい人の同じ部位=写真下左=は、滑らかだ(横に走る黒い2本の帯は鼻毛)。明白な違いに長年の謎が解けた気がした。

 笠井さんによると、もっと深刻な人がいる。くしゃみや顔を洗う際に出る人のほか、笑っただけで出血する人までいるという。

          

 このように日常生活に影響する場合、同クリニックではレーザーや高周波で血管の表面を焼いてつぶし、出血しにくくする手術をしている。約30分ですみ、健康保険を利用すれば患者負担は数千円。週に1、2人が受けているというから、鼻血に悩む人は意外に多いようだ。

 突然の鼻血で、病院に駆け込む人もいる。国立国際医療センター(東京都新宿区)には、週に数人が鼻血を理由に来るという。

 同センター耳鼻咽喉科の弓削忠医師は「キーゼルバッハ部位からの出血であれば、ほとんどの場合、心配はいりません」と話す。特に子どもの場合、鼻の中を指でほじることが習慣化し、キーゼルバッハ部位を傷つけて出血する例がほとんどだ。

 鼻水などが混じっているため、量はもとの血液の5〜10倍。だから、本人よりもまわりが驚くことが多い。

 止血をするには、鼻の中に脱脂綿を少しきつめに詰めて、キーゼルバッハ部位を鼻の外側から押さえる。5〜15分そのままにしておけば、出血は止まる。

 ティッシュペーパーは引き抜く際に鼻の粘膜を傷つけやすいので避けた方がいい。

 仰向けになると、鼻の奥から口内に血が流れて飲み込んでしまい、気分が悪くなることがある。できるだけ前かがみの姿勢で、血はそのまま吐き出すのがよいそうだ。

          

 身近な出来事だけに、鼻血にまつわる俗説は多い。代表例が止血の最中に後頭部や首の後ろ側をたたくこと。「止血には全く関係ない上、体に負担をかけるのでやめた方がよい」と弓削さん。

 「チョコレートやピーナツを食べると出る」「疲れたら出る」も、「科学的な根拠はない」と弓削さんは言う。

 ただし、緊張や興奮、飲酒で顔が赤くなる場合には、鼻血が出やすくなるそうだ。

 たかが鼻血と侮れない場合もある。強く頭を打った時などには、鼻の奥の動脈が切れて出血することがある。

 脱脂綿を詰めても、鮮やかな色の血液が大量にあふれてくる場合は要注意。「家庭での止血は無理。速やかに病院で手当てを受けて下さい」と弓削さんは促す。

 アレルギー性鼻炎による刺激高血圧、糖尿病、ビタミンCの不足脳梗塞(こうそく)予防薬など薬の副作用腫瘍(しゅよう)やがん――によっても鼻血が出るという。

          

 さらに、血液の病気の可能性を疑わなければならない場合もある。

 順天堂大学の押味和夫教授(血液内科)は「めったにないことだが、鼻血から急性白血病や血友病などの血液疾患がわかることもある」と指摘する。

 両方の鼻から同時に出たり、歯茎など他の場所からも出血したりする場合は、血液疾患の可能性がある。

 私は鼻血に慣れてしまい、気に留めなくなっていた。次に出血したら、注意して見てみよう。

     

 予防するには

 鼻血が出やすい人は、以下の行為を避けよう。

 (1)キーゼルバッハ部位への物理的な刺激

 ・鼻の中に指を入れてほじる

 ・手で鼻を強くこする

 ・手で鼻を強く押さえつける

 ・必要以上に頻繁に鼻をかむ

 (2)顔が赤くなる状態

 ・室温を必要以上に高くする

 ・過度に興奮する

 ・過度に飲酒する

 詳しく知るには

 日本成人病予防協会のホームページは、鼻血の仕組みや止血法など全般に詳しい。笠井耳鼻咽喉科クリニックのホームページには手術の説明がある。 (2003/10/20)

 関連情報

  日本成人病予防協会のホームページ

  笠井耳鼻咽喉科クリニックのホームページ

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